第二二章 イ エ ス の 復 活
― ルカ福音書 二三章(五〇節)〜二四章 ―
はじめに
三部で構成されているルカ福音書の第三部「エルサレムでの受難と復活」は、これまでに見てきたように、次の三つの区分に分けることができます。第二区分の「受難物語」はルカ福音書二二章と二三章の二章にわたりますが、その終わりの埋葬の段落(二三・五〇〜五六)は、続く二四章一〜一二節の墓の記事と一体で、復活証言の一部としての「空の墓」の段落を構成すると考えられるので、第三区分「復活告知」に入れます。
福音告知の活動は、弟子たちが復活されたイエスの顕現を体験したところから始まります。それで各福音書は、復活されたイエスが弟子たちに現れた出来事を語り伝える伝承を用いて、十字架上の死に続いて、復活されたイエスが弟子たちに現れた「顕現物語」を書いていますが、その内容は福音書によってかなり違っています。イエスの遺体を葬った墓が空になっていたという「空の墓」の記事はどの福音書にもあり、その内容は基本的には同じですが、それに続く復活されたイエスの顕現については、福音書によって大きく違います。大別すると二つのグループがあります。福音書全体の顕現記事の理解の仕方については、拙著『福音の史的展開T』の序章「復活者イエスの顕現」で扱いましたので、それを参照してください。
福音書がイエスの復活を告知するさい、それは二種類の証言に基づいて行われています。一つは、イエスを葬った墓が空になっていたという事実の証言で、もう一つは、弟子たちが復活されたイエスを「見た」という体験の証言です。ルカ福音書もこの二種類の証言を並べて、イエスの復活を告知していますが、それぞれをルカ独自の仕方でしています。その特色を以下の講解で見ていくことになります。二四章一三節以下が、初版ルカ福音書成立の後で、マルキオンに対抗するために使徒言行録を書いたときに付加されたことについては、拙著『福音の史的展開U』402頁の第八章第一節「ルカ二部作成立の状況と経緯」、とくに467頁「2 顕現物語」を参照してください。