市川喜一著作集 > 第19巻 ルカ福音書講解V > あとがき

あとがき

 本書は、著者の個人福音誌『天旅』の二〇一一年1号から二〇一二年4号(終刊号)に至る八号にわたって連載してきました「ルカ福音書講解18〜25」をまとめて一書にしたものです。本書はルカ福音書の第三部(一九章二八節〜二四章五三節)および冒頭に置かれた誕生物語(一章〜二章)を扱っています。本書の刊行をもって、『市川喜一著作集』におけるルカ福音書講解を完了することになります。なお、その前半で「使徒言行録」の講解を兼ねていて、同時に著者の新約聖書研究の集成となる『福音の史的展開』は昨年で刊行を済ませていますので、本書の刊行をもって二期十二年にわたる著者の新約聖書講解はすべて完了することになり、感慨ひとしお深くあります。『市川喜一著作集』については、巻末奥付の「市川喜一著作集一覧」をごらんください。

 なお、各巻が取り扱いました範囲は次のようになります。

 『ルカ福音書講解T』  ルカ福音書 三章一節〜九章五〇節
 『ルカ福音書講解U』  ルカ福音書 九章五一節〜一九章二七節
 『ルカ福音書講解V』  ルカ福音書 一九章二八節〜二四章五三節 および 一章〜二章の「誕生物語」

「誕生物語」を最後に扱う理由については、『ルカ福音書講解T』58頁の「誕生物語の扱いについて」をごらんください。

 本書は、京都聖書学研究所における「新約原典研究会」での議論に、直接または間接に多くを負っています。この研究会は現在、久野晉良氏(大阪経済大学名誉教授、ギリシア哲学専攻)、私市元宏氏(甲南女子大学名誉教授、英文学・英米宗教史専攻)、水垣渉氏(京都大学名誉教授、基督教学専攻)、田辺明子氏(プール学院大学名誉教授、基督教学専攻)および著者の五名で進められています。この研究会は一九七七年に開設、フィリピ書研究に始まり、八年間のマルコ福音書研究を経て、二二年に及ぶローマ書研究を終わり、エフェソ書研究を済ませ、現在はヨハネ福音書の研究に入っています(これまでに刊行した著作の「あとがき」における経過の記述は不正確でしたので訂正します)。ルカ福音書は直接の主題ではありませんでしたが、折に触れて福音書の問題を取り上げて議論が行われています。また、『天旅』誌上に発表したわたしの「ルカ福音書講解」に、毎回懇切な講評と誤りの指摘をいただきました。とくに水垣渉氏からは、毎号内容についても表記についても細かい点に至るまで懇切な指摘をいただき、誤りを訂正することができました。本書は、基本的には著者の信仰告白的な作品ですから、その内容については著者一人の責任ですが、研究会諸氏の励ましとご教示に大いに助けられました。本書の出版にあたって改めて諸氏に深甚の謝意を表します。
 

   二〇一三年  三月
                    市 川 喜 一



著者略歴  市川 喜一 (いちかわ きいち)

1930年 京都市に生まれる
1951年 京都工業専門学校機械科(旧制)卒業
1955年 京都大学法学部卒業、同大学院法学研究科入学
     在学中、フィンランド宣教師の集会で入信、受洗
     以後、文学部哲学科基督学科の聴講生
1956年 大学院中退、独立伝道開始
     59〜69年、小池辰雄氏の「キリスト召団」の運動に参加
     京都・大阪など関西各地、小諸などで聖書講義の活動
1986年 個人福音誌「天旅」を発刊
2000年 開設したホームページに「市川喜一著作集」を順次上梓
2002年 「市川喜一著作集」の刊行を開始
2006年 著作集第1期完了、独立伝道50周年記念会
2012年 個人福音誌「天旅」終刊
2014年 著作集第2期を完了

   ホームページ「天旅」のURL  http://tenryo.net