市川喜一著作集 > 第19巻 ルカ福音書講解V > 第26講

第二〇章 逮 捕 と 裁 判

       ― ルカ福音書 二二章(三九節)〜二三章(一二節) ―

はじめに

 三部で構成されているルカ福音書の第三部「エルサレムでの受難と復活」は、これまでに見てきたように、次の三つの区分に分けることができます。

1 神殿での活動と論争(一九・二八〜二一・三八)
2 受難物語(二二・一〜二三・四九)
3 復活告知(二三・五〇〜二四・五三)

 第二区分の「受難物語」はルカ福音書二二章と二三章の二章にわたりますが、その終わりの埋葬の段落(二三・五〇〜五六)は、続く二四章一〜一二節の墓の記事と一体で、復活証言の一部としての「空の墓」の段落を構成すると考えられるので、次の第三区分「復活告知」に入れます。

 第二区分の「受難物語」は、最後の晩餐、逮捕と裁判、十字架上の死という三つの山場に分けて講解を進めています。前回は最後の晩餐を扱いましたので、今回は「逮捕と裁判」を取り上げます。そのさい、ピラトの裁判は段落139の「死刑の判決を受ける」(二三・一三〜二五)まで続いていますが、章のバランス上、今回の講解はその前で切り、その段落は続く十字架刑の執行と合わせて、「十字架刑の判決と執行」という見出しでまとめることにします。