市川喜一著作集 > 第19巻 ルカ福音書講解V > 第11講

第一八章 終末についての説教

       ―― ルカ福音書 二一章五〜三八節 ――

はじめに

 三部で構成されているルカ福音書の第三部「エルサレムでの受難と復活」は、先に見たように、次の三つの区分に分けることができます。

1 神殿での活動と論争(一九・二八〜二一・三八)
2 受難物語(二二・一〜二三・四九)
3 復活告知(二三・五〇〜二四・五三)

 そして第一区分の「神殿での活動と論争」は、さらに次の三つの小区分に分けることができます。

  A エルサレム入り(一九・二八〜四六)
  B 神殿境内での教え(一九・四七〜二一・四)
  C 終末についての説教(二一・五〜三八)

 前章でこの小区分のAとBを見ましたので、本章ではCの「終末についての説教」を講解することになります。この箇所は、「人の子」の到来というパレスチナ・ユダヤ人のイエス伝承で形成された「マルコの小黙示録」(マルコ一三章)を継承しつつ、ルカ独自の解釈や表現が織り込まれている点が注目されます。