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第三部 エルサレムでの受難と復活

第一七章 エルサレム神殿での活動と論争

       ― ルカ福音書 一九章(二八節)〜二一章(四節) ―

はじめに

 イエスはついにエルサレムにお入りになります。ルカの物語は、ここからエルサレムでの受難と復活を物語る第三部に入ります。エルサレムへの旅を語る第二部では、ルカはマルコの枠から離れて、独自の材料と配列で物語を進めてきましたが、第三部では(第一部でそうであったように)再びマルコの内容と順序に従って物語を進めます。しかし、マルコの物語を引き写すのではなく、ルカ自身の視点から変更したり省略したりして、イエスの最後の働きを語り伝えます。当然ここにもルカの福音告知の特質が出てきます。
 エルサレムでの受難と復活を語る第三部は、大きく分けて、次の三区分で構成されていると見られます。

1 神殿での活動と論争(一九・二八〜二一・三八)
2 受難物語(二二・一〜二三・四九)
3 復活告知(二三・五〇〜二四・五三)

 エルサレムに入るということは神殿に入るということです。エルサレムでのイエスの活動は神殿を舞台とし、神殿との関連で行われます。区分1の「神殿での活動と論争」は、次の三つの小区分に分けられます。
  A「エルサレムに入るイエス」(一九・二八〜四六)
  B「神殿での教えと論争」(一九・四七〜二一・四)
  C「終末についての説教」(二一・五〜三八)
aAとBは本章で、Cは章を改めて次章で扱います。