市川喜一著作集 > 第17巻 ルカ福音書講解T > 第54講

58 逆らわない者は味方(9章49〜50節)

一致の土台

 そこで、ヨハネが言った。「先生、お名前を使って悪霊を追い出している者を見ましたが、わたしたちと一緒にあなたに従わないので、やめさせようとしました」。(九・四九)

 原文では「そこでヨハネが答えて言った」とあります。これはイエスが「わたしの名のゆえに」と言われたことを受けて、ヨハネが言った言葉としてここに置かれたのでしょう。「わたしたちと一緒にあなたに従わない」とか「わたしたちの仲間にならない」(マルコ)という表現には、最初期の諸共同体の間で自分たちのグループに所属しない者たちのイエスの名による活動を禁圧しようとした状況が重なっていることを感じさせます。この状況は現代の教派・教団の間で、自分たちに所属しない者を異端として禁圧し、対立抗争する姿を連想させます。

 イエスは言われた。「やめさせてはならない。あなたがたに逆らわない者は、あなたがたの味方なのである」。(九・五〇)

 自分のグループに属さない人たちが進めるイエスの名のための活動を、このように自分に味方するものとして受け入れることが、イエスが求められるところであり、イエスに属する者にふさわしい姿勢です。その姿勢はパウロにも見られます(フィリピ一・一五〜一八)。このように自分たちのグループの在り方を絶対化しないことが、キリストの民の一致の出発点であり土台です。