市川喜一著作集 > 第16巻 対話編・永遠の命U > 第1講

第二部 救済者の天への帰還 

はじめに

 ヨハネ福音書は、序詩(一・一〜一八)と補遺(二一章)を別にして、本体部分は大きく前半の第一部(一〜一二章)と後半の第二部(一三〜二〇章)とに分かれます。前半の第一部は、天から世に降って来られた救済者の地上での働きを描きます。そして後半の第二部は、地上での働きを終えられた救済者が天に帰られる出来事を語ります。
 この構成は、福音書自身が「イエスの時」という表現で示しています。この「時」は、イエスの言葉の中では「わたしの時」と言われています。その「時」とは、救済の決定的な出来事が起こる時、すなわちイエスの十字架と復活の出来事を指しています。前半の第一部では、その「時」はまだ来ていないことが明言され(二・四、七・三〇、八・二〇)、第一部を締め括る一二章でついにその「時」が来たことが宣言されます(二三節)。そして後半の第二部では、その「時」が来ていることが明言されます(一三・一、一七・一)。第二部はその「時」の内容そのものを語ることになります。
 同じことが、イエスが「栄光を受ける」という表現で語られています。すなわち、第一部ではイエスは「まだ栄光を受けていない」とされていますが(七・三九)、第一部を締め括り第二部を導入する位置にある一二章で、「人の子が栄光を受ける時が来た」と宣言されます(二三節)。そして、第二部では「今や、人の子は栄光を受けた」とされます(一三・三一)。

 第二部には、二つの大きな区分が認められます。この区分に従って講解を進めます。

 第二部 救済者の天への帰還(13〜20章) 

 T 弟子たちへの告別説教(13章〜17章)

 U 受難と復活(18章〜20章)