市川喜一著作集 > 第3巻 マルコ福音書講解T > 第27講

27 譬えによる宣教  4章 33〜34節

33 イエスはこのような多くの譬で、人々の聞く力にしたがって、御言葉を語られた。 34 人々には譬によらないでは語られなかったが、自分の弟子たちには、ひそかにすべてを解き明かされた。

弟子に与えられる秘義

 マルコはすでに四章一〇〜一二節で、伝承されていた「神の国の奥義」に関するイエスの言葉を用いて、奥義が授けられる弟子たちと、すべてが謎のままになる外の人々との対照を語った(当該箇所参照)。譬をまとめた部分を終わるにあたって、あらためて自分の言葉で同じ趣旨のことを語って締め括る。イエスの「神の国」宣教には、後で見ることになる「人の子」に関する教えのように、弟子たちだけにひそかに解きあかされた部分(秘教的要素)もあることは事実であるが、マルコはこれを譬についても適用し、イエスの譬を理解するためには、弟子としてイエスに従い、イエスから直接その真義を教えられなければならないことを示唆して、譬集を締め括るのである。