市川喜一著作集 > 第1巻 聖書百話 > まえがき

改訂版について

 本書の初版は二〇〇二年に刊行しましたが、一回読み切りの短文で読みやすいということで、『市川喜一著作集』の中では一番多くの読者を得ました。しかし、最初の書籍版の刊行で不慣れなことも多く、多くの問題点を残すままに刊行されました。それで今回、有志の兄姉の協力を得て再校正をしていただき、改訂版としてこの第二版を刊行する運びとなりました。
 改訂版の刊行にあたって次の諸点に配慮しました。
 1 引用聖書 本書は著者の個人福音誌「天旅」の巻頭言を集めたものです。各所感文の初めに引用している聖書の言葉は、執筆当時使用していた協会訳(口語訳)聖書からですが、執筆期間の途中から新共同訳聖書の刊行が始まり、それを用いる場合が出てきました。本書では原則として協会訳を使いますが、新共同訳や私訳などを用いる場合は、どの訳かを付記しました。
 2 表記の統一 協会訳と新共同訳では、人名や地名などカタカナ表記が違っている場合がありますが、コンピュータ検索の便宜上、新共同訳の表記に統一しました。たとえば、ペテロはペトロに、パリサイはファリサイに統一しました。漢字の用法でも、詩篇は詩編に統一してあります。


はじめに

 本書「聖書百話」は、聖書の中の一句を主題とした短い所感文一〇〇編を集めたものです。聖書解釈の論文ではなく、筆者が聖書に導かれて歩んできた生涯で、折々の出来事や様々な状況の中で、聖書の一言葉に依り縋るようにして、祈り、また感じたことを短い文に書きとどめたものです。したがって体系的なものではなく、気の向くままにどこを開いて読んでいただいてもよいものです。読者が、
病床や失意のときなど、生きることに重荷を感じたり行き詰まったりしたときに、慰めになり、励ましとなることを願って、お手元にお届けするものです。
 このような性格の所感文として、本書は聖書の一句という小窓を通して見た人生の光景という内容になっています。ときには、少数ながら社会や世界の大きな出来事についての所感もありますので、聖書の小窓から見た歴史の風景という面もあります。
 本書は、筆者の個人福音誌「天旅」の巻頭言を、一九八六年の創刊号から二〇〇二年一号まで、ほぼ年代順に配列してあります。個人的な内容のものや長すぎるものなど数編を省略していますが、代わりに福音誌「アレーテイア」に発表した短文五編を入れて一〇〇編にしています。掲載の号数は、それぞれの文章の末尾に記しておきます。

   二〇〇二年 四月
                    市 川 喜 一